【話題のデパート】マクダックスの目指す"一流"とは

この記事はフィクションです。
ニューヨークの街の一区画を占領する大きな建物。ウォーターストリートを望む10の窓と、8番街を望む16の窓を見上げ、ニューヨーカーたちはアメリカンドリームに想いを馳せる。ここはマクダックス・デパートメントストア。化粧品だろうが、薬だろうが、服だろうがぬいぐるみだろうが、一流品でなければこの店には並ばない。その値段設定に妥協は無く、それが故に、マクダックスに並ぶ商品であるという事実だけでブランドが成り立つ。アドベンチャラーズ・インタビューの第一回目は、そのマクダックス・デパートメントストアの経営者であるスクルージ・マクダック氏だ。
──マクダックスは突出した高級店としてのイメージが強いですが、これだけ高単価な商品で、いったいどのようにして商売を成り立たせているのですか。 

スクルージ・マクダック ふぅむ。それは、いわゆる"愚問"というやつじゃな。この店はな、アメリカンドリームの具現なのだ。

ニューヨーカーは誰しも、マクダックスのショーウィンドウを見て「いつかマクダックスの靴を履くんだ」と決意し、働き、出世の為に努力する。

云わばこの値段の高さが、ニューヨーカー達の生きる活力にもなるのじゃよ。

ショーウィンドウのガラスを見てみなさい。手のひらと鼻を押し付けた跡がそこかしこにあるじゃろう?
顧客たち自身が商品の輝きに魅了されておる。
ルーズヴェルトのスーツすらも霞むような輝きにな。
もし値段を下げようものなら、顧客はたちまちマクダックスを離れてしまうじゃろう。

──なるほど。マクダックスという名前で、かつ高いからこそ売れる。それだけのブランディングを、ほとんどご自身でなさったのが本当に驚きです。

中々に大変なものじゃった。最近までわし自ら統括、仕入れ、ブランドデザイナーのヘッドハンティング、販売まで全てこなしておったからな。

その過程で身に付けたバイヤー的な視点は、顧客も気付かないような商品の魅力を引き出すのにとても重要じゃった。

たとえば服をひとつとっても、その服は誰が、何処へ、何の用事で着ていくべき服なのか。顧客に訊かれたとしてわしらデパートの人間が説明できなければ、誰にも説明できないからのう。

それより、なんだ今日の君の服は。ひどいもんじゃないか。
帰りにうちでスーツを買いなさい。

君には似合わんだろうが、今の服よりはマシだ。

──経営者ご自身で販売も手掛けるとのことですが、販売するにあたって気を付けていることなど、ありますでしょうか。

顧客を差別しないことじゃな。
無論、単価という点ではすでにスーパーセレブ以外は相手にしないことを表明しているようなものじゃ。
じゃが逆に、それを承知で来店した者なら皆等しくマクダックスの顧客。

たとえどんなにみすぼらしい格好をしていようとも「毛皮が欲しい」と言われれば精一杯のおすすめをするし、「S.S.フーサトニック号で船旅に出る」と言われれば、次の瞬間には船旅に必要なグッズ一式を用意するのじゃ。

少々、値は張るがのう。
──デパートに並ぶ数々の高級品、あれらはいったいどのようにして選んでおられるのですか。

マクダックスには「本物」しか置かん。
いわゆる「流行っぽい」物や、「高級ブランドっぽい」物は置かんでな。

オリジナリティあってこその商品。無論それを見抜くのは素人では厳しかろう。わしの経験あってのものじゃ。

見る眼は厳しいが、なぁに、一度マクダックスに出店が決まれば、そのブランドのビジネスは最低でも4倍の大きさにはなるじゃろうて。

──良いものだけをマクダックスの店舗に置くことで、逆にマクダックスへの出店それ自体がブランディングにもなり得る、ということですか。

その通り。どうせ高い値で売るからのう。
商品のデザイナーには、どんどん良いものを作らせておる。
デザイナーは他のデパートのバイヤーに「もっと安く作れ」だの耳が痛くなるほど言われておるから、わしが「いいぞ、もっとやれぃ」と言うと、とたんに眼が輝くのじゃ。

──著名なファッションライターが「NYでブランドをやるならマクダックスに店を持て」と言っていました。

若手のデザイナーから偉大なメーカーまで、マクダックスには「本物」が揃っておる。そのファッションライターはたんに「本物になれ」と言っているに過ぎんよ(笑)。

マクダックスは、例え世界が物に溢れ、小売全体の成長が頭打ちになったとしても、"本物"だからこそ生き残るじゃろうて。

──最後に、マクダックさんの考える「一流」とは何ですか?


一流は、「出会いを大事にする」。

様々なところに出向き、様々な人に興味を持つ。ニューヨークのデザイナーやナンタケットのスターバック夫人との業務提携もそうじゃが、世界には刺激的で、自分の為になる出会いに満ちておる。

現実の出会いは写真や映像、本だけでは得難いものを与えてくれるものじゃ。

──本日はありがとうございました。インタビューは以上になります。

……雨が降っておるのう。ここで君に会ったのも何かの縁じゃ。傘を貸してくれんか?
わしは自分の傘を持っとらんのだ。

(文章:Nos_ghostopia  写真:KANA@mikima_kawaii)

この記事はフィクションです。
実在のアトラクションに関する一個人の創作であり、公式の設定を紹介するものではありません。

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